BOØWYの記録

BOØWYの記録

【空集合ってなんすか?(笑)】1982年 掲載誌1 BOØWY

BOØWY

 ※トップ画像は加工して色を変えております。

この間、面白いバンドを見つけてしまった。
2月25日にビクターのインビテーション・レーベルからアルバム『MORAL』でデビューした"BOØWY"というバンドだ。
パンク・ニューウェイヴの過激さを巻き散らしてるくせに、ポップを提唱する。
他人の事なんか眼中にないくせに、やたらに自我をアピールする。
そのアンバランスさの中に1つの巨大な要素が見え隠れし、気をひきつけてやまないのだ。

BOØWY/暴威。ヴォーカル・氷室狂介(21)、ギター・布袋寅泰(20)
ギター・諸星アツシ(20)、ベース・松井恒松(21)、Sax・深沢和明(20)
ドラム・高橋マコト(28)。バンドの前身は、群馬の二大人気アマチュアバンド"デス・ペナルティー"と"ジギー・リギー"で両バンドの雄である氷室と布袋が、東京で劇的な再会をした事からBOØWYは結成された。

 

布袋「劇的な再会やったね。六本木のアマンドの前を通ったら氷室が歩いてたんすよ(笑)。」

氷室「すっごい偶然。"おーっ、ホテイじゃないか。お前!!久しぶりだなー!おーっ、バンドやろうぜ!”で始まったのね。俺は、その頃やりたい音楽がやりたくてしょうがない時だったから。"デス・ペナルティー"がヤマハのEAST WESTで入賞し、今の事務所の人に"プロでやらないか"って誘われて上京したんだけど、話がポシャッちゃってね。俺はスピニッヂ・パワーってバンドのヴォーカルに入ってデビュー('80年キング)してたんだけど、音楽性が違うから煮つまってて。」

布袋「俺もブラブラしてたからね。バンドがやりたかったね。すぐ結成。」

氷室「ドラマーがいなくて、ドラムのオーディションをやって今の高橋さんを見つけた。ゴミみたいのばっか集まって、高橋さんだけがひときわ目立ってたね。」

布袋「1人だけ年が離れてて、あれで結構気にしてるんだ。冗談言うと本気で怒る(笑)。」

 

"BOØWY/暴威。"DAVID BOWIE/出火吐暴威、からなぞらえたバンド名であることは一目瞭然だ。
一つ気になるのは「BOØWY」「Ø」。
「Ø」は数字の空集合の記号だ。
どこにも属さない、という意味の、あのØだ。

 

氷室「空集合ってなんすか?(笑)」へー、そういう風に解釈してたんだ。カッコイイね(笑)。あれは、深い意味全然ないんですよ。ただ消しとかないと"ブーイ"って読まれちゃうから。"ボーイ"と発音させるためだけだったりして。」

布袋「でもその解釈いいみたい。次のインタビューでそう答える(笑)。」

氷室「デヴィッド・ボウイーが好きだからBOØWYにしたわけじゃない。言葉の響きがカッコイイから。"BOØWY/暴威"にしたの。暴力の威力なんて、えれー、カッコイイじゃん。」

布袋「俺、ボウイ凄く好きだよ。メンバー全員で相談して決めたんだけどね。個人個人気に入ったからね。」

 

MORAL/BOØWY FIRST ALBUM。
レコーディングは実に昨年の2月に成されていた。
レコード会社も未定のままアルバムを完成させていたのだ。
今回のデビュー・リリースにあたってはリミックスが2~3曲施してある程度だという。
サウンド・プロデューサーにマライアの渡辺モリオ。

 

氷室「アルバムを作っちゃってからレコード会社にもっていくというやり方してたんだけど、そこらへんは事務所に任せっきり。どこでもよかったんだね。ただ、やりたい事をやらせてくれなければ、ダメというのはあった。」

布袋「レコーディングの話なんて、随分昔の事でもう忘れちゃった。でも早かったね。
一週間くらいで終わった。」

氷室「やりたい放題やらせてもらって、意見も完璧に取り入れてもらったね。あの時点では最高に満足してたよ。」

 

MORAL/BOØWY

人の不幸は大好きさ
人の不幸は大好きさ
あいつが自殺したって時も
俺はニヤッと笑っちまった
祭り気分が大好きなのさ
ただの野次馬根性だけさ
けど、その場にでたら
きまりきった顔をしてるのさ
神妙な顔の下の
含み笑いを隠しとおして
WOW WOW
それが モラルさ

(氷室狂介作詞"モラル"より)

 

氷室「俺たち、大きなものに対してどうこう言ってない。政治とか体制とかさ。だって無意味だからね。もっと身近なさ、一般的な"モラル"ってもんをとりあげて言ってるんだ。火事でも自殺でも人の不幸ってのを本当にかなしむヤツなんていないよ、うわっつらだけさ。みんな腹の中で面白がってるんだ。"人の不幸は楽しい"ってわけさ。それがモラルなんだ。ってさ。」

 

(中略)

 

アルバム「MORAL」から受ける印象とライヴの印象はあまりに異なる。
ライヴで見せた重量感はアルバムには感じられない。

 
氷室「ライヴとアルバムは全然違う風にしてくつもり。ライヴは見せるもんだから。意識的にそっちの方に比重がいく。」

布袋「アルバムの方はすっごいポップになっちゃってるね。でも、今後はもっとポップになっていくと思う、アルバムの方がね。」

 

 * * *
BOØWYの音楽には主張がないと言う。
何のおしつけも演説もないのだという。
「ただ俺たちはこう生きている」というのを表現しているだけだと言う。
彼らの音楽への主張、姿勢は、ある一つの執着によってすべてがおぎなわれているのだ。
 "音楽をやりたいんだ"
 * * *

 

氷室「バンドやめたらどうする?って?バンドやめたらさ、もうゴミだよ。ゴミ。
ゴミだってわかってるからバンドやめないよ。やめたらゴミだもん絶対バンドやめない。」

布袋「俺なんか粗大ゴミだね(笑)。」

 

(原文ママ)